第1章 ベクトルの世界に入る
点でも長さでもない、「移動量」としての矢印を理解する。
社会でどう使う?
地図アプリで「東に3km、北に2km進む」と考えるとき、必要なのは場所そのものではなく移動の向きと大きさです。ベクトルはこのような移動、速度、力、画面上のズレを整理する言葉です。
1今日の世界の切り替え
ベクトルで最初に大事なのは、同じ図を3つの世界で見分けることです。
図形の言葉
点A、点B、線分AB、長さAB。
ベクトルの言葉
$\vec{AB}$ は「AからBへの移動」。始点を移しても向きと大きさが同じなら同じ。
計算の言葉
成分にすれば $(3,2)$ のように数の組で扱える。
定義
ベクトルとは、向きと大きさをもつ量です。$\vec{AB}$ は「点Aから点Bへ動く移動量」を表します。
2始点を動かしても同じベクトル
下の図でスライダーを動かすと、青い矢印とオレンジの矢印の場所が変わります。それでも「右に3、上に2」の移動なら同じベクトルです。
ポイント
ベクトルは「どこに描いてあるか」ではなく「どちら向きに、どれだけ動くか」で決まります。
3長さとベクトルは別物
$\vec{AB}$ は矢印です。一方、$|\vec{AB}|$ や $AB$ は長さです。
$$\vec{AB}\neq AB,\qquad |\vec{AB}|=AB$$
この区別があいまいだと、内積や垂直条件で大きくつまずきます。
頻出ミス
- $\vec{a}$ と $|\vec{a}|$ を同じものとして扱う。
- 点Aとベクトル $\vec{OA}$ を区別しない。
- 矢印の場所が違うだけで別のベクトルだと思う。
4練習問題
練習 1ベクトルの意味
$\vec{AB}$ が表すものとして最も正しいものは?
ヒント
矢印には「どちらへ」と「どれだけ」があります。解説
$\vec{AB}$ はAからBへ進む移動量です。長さだけなら $|\vec{AB}|$ または $AB$ と書きます。
練習 2同じベクトル
右に3、上に2進む矢印を、別の場所に平行移動した。ベクトルとしてどうなる?
ヒント
ベクトルは始点の場所で決まりません。解説
向きと大きさが同じなので同じベクトルです。始点は自由に動かして考えられます。
練習 3長さの記号
ベクトル $\vec{a}$ の長さを表す記号はどれ?
ヒント
絶対値のような縦線を使います。解説
$|\vec{a}|$ がベクトル $\vec{a}$ の長さです。$\vec{a}$ 自体は向きも持つ量です。
練習 4長さを求める
右に3、上に4進むベクトルの長さは?
答え:
ヒント
$3^2+4^2=5^2$ です。解説
横3、縦4の直角三角形の斜辺なので、長さは $\sqrt{3^2+4^2}=5$ です。
練習 5点とベクトル
点Aと $\vec{OA}$ の違いとして正しいものは?
ヒント
点は「場所」、ベクトルは「移動」です。解説
点Aは平面上の場所です。$\vec{OA}$ は基準点OからAへ向かう矢印で、位置ベクトルの考え方につながります。