第1章 Σ記号の意味

「長い足し算を1行で書く」ための記号を、読める・書ける・展開できるようになろう。

社会でどう使う?

Σは、プログラミングでいう「forループで合計を求める処理」に近い考え方です。1日ごとの売上、テストの点数、アプリのアクセス数のように、同じルールで並ぶデータをまとめるときに使う見方です。

1なぜΣが必要なのか

たとえば「1 から 100 までの整数をすべて足す」ことを式で書いてみると…

$$1+2+3+4+5+\cdots+98+99+100$$

途中を「$\cdots$」でごまかしてもこの長さ。もし「1 から $n$ まで」と一般化したら、もっとあいまいになってしまいます。 そこで数学では、「規則的な足し算をコンパクトに、正確に書く」ための記号 $\Sigma$(シグマ)を使います。

$$1+2+3+\cdots+100 \;=\; \sum_{k=1}^{100} k$$

右辺はたった数文字。しかも「どこからどこまで、何を足すか」が正確に伝わります。

2Σの読み方 — 3つのパーツ

Σ記号は次の3つのパーツでできています。

上端 $n$ Σ 下端 $k=1$ $a_k$ 中身(第 $k$ 項の式)
「$k$ を 1 から $n$ まで動かしながら $a_k$ を足し合わせる」と読む
📘 定義
$$\sum_{k=1}^{n} a_k = a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_n$$
  • 下端 … カウンター $k$ のスタート値(1 とは限らない)
  • 上端 … カウンター $k$ のゴール値
  • 中身 … 足したいものを「$k$ の式」で書いたもの

つまりΣは「$k$ に下端から上端までの整数を順番に代入して、出てきた値を全部足す」という操作の指示書です。プログラミングの for ループの「合計を求める処理」と同じ考え方です。

3展開マシンで体感しよう

下のウィジェットで中身の式・下端・上端を自由に変えて、「▶ 展開アニメ」を押してみよう。 $k$ に値が順番に代入されて、項が1つずつ生まれていく様子が見られます。

✅ 確認ポイント
  • 下端を 3 にすると、和は $k=3$ の項から始まる($k=1,2$ の項は存在しない
  • 中身を「3(定数)」にすると、$k$ が現れなくても「3 を(項数)回足す」という意味になる
  • 項の個数はいつでも 上端 − 下端 + 1

4つまずきやすいポイント

① $k$ はただの「カウンター」(ダミー変数)

次の3つはすべて同じ値です。

$$\sum_{k=1}^{n} k^2 = \sum_{i=1}^{n} i^2 = \sum_{j=1}^{n} j^2$$

文字 $k$ は展開すると消えてしまう「作業用の文字」なので、何という名前でも結果は変わりません。 ただし $\displaystyle\sum_{k=1}^{n} a_k$ の $n$ のように展開後も残る文字とは区別が必要です。

② 下端が 1 でない場合

$$\sum_{k=4}^{7} k^2 = 4^2+5^2+6^2+7^2$$

スタートが $k=4$ なら、$k=1,2,3$ の項はありません。項数は $7-4+1=4$ 個です。

⚠️ 注意:項数の数え間違い

$k=m$ から $k=n$ までの項数は $n-m+1$ 個。「$n-m$ 個」としがちなので注意!
(例:4番から7番まで整列した生徒は $7-4+1=4$ 人いる)

③ 定数の和

$$\sum_{k=1}^{n} 3 = \underbrace{3+3+\cdots+3}_{n\text{ 個}} = 3n$$

中身に $k$ がなくても「$k=1$ から $n$ まで、毎回 3 を足す」という意味。これが第2章の公式 $\sum_{k=1}^n c = cn$ につながります。

5練習問題

全5問。ヒント → 解説の順に開けるので、まずは自力で挑戦しよう。

練習 1Σを展開する
$\displaystyle\sum_{k=1}^{4} k^2$ を展開したものはどれ?
💡 ヒント$k$ に $1, 2, 3, 4$ を順番に代入して、「+」でつなぐ。
📖 解説

$k=1$ のとき $1^2$、$k=2$ のとき $2^2$、$k=3$ のとき $3^2$、$k=4$ のとき $4^2$。これらをすべて足して $$\sum_{k=1}^{4} k^2 = 1^2+2^2+3^2+4^2 = 30$$ Σは「掛け算」ではなく「足し算」の記号であることに注意。

練習 2値を計算する
$\displaystyle\sum_{k=1}^{5} (2k-1)$ の値を求めよう。
答え:
💡 ヒント$k=1,2,3,4,5$ を代入すると $1, 3, 5, 7, 9$。奇数が並ぶ!
📖 解説

$$\sum_{k=1}^{5}(2k-1) = 1+3+5+7+9 = 25$$ 奇数を小さい方から $n$ 個足すと $n^2$ になる、という美しい性質の実例($5^2=25$)。

練習 3和をΣで表す
$3+6+9+\cdots+30$ をΣ記号で表したものはどれ?
💡 ヒント並んでいるのは「3の倍数」。$3=3\times 1$、$30=3\times 10$。第 $k$ 項は?
📖 解説

第 $k$ 項は $3k$ と書ける。最後の項 $30$ は $3k=30$ より $k=10$。よって $$3+6+\cdots+30=\sum_{k=1}^{10}3k$$ 上端は「項の値 30」ではなく「カウンターの最終値 10」であることがポイント。$\sum_{k=3}^{30}k$ は $3+4+5+\cdots+30$ になってしまう。

練習 4項数を数える
$\displaystyle\sum_{k=4}^{10} a_k$ の項数は何個?
答え:
💡 ヒント公式は「上端 − 下端 + 1」。指を折って $k=4,5,6,\dots,10$ と数えてもOK。
📖 解説

$k$ は $4,5,6,7,8,9,10$ の 7 通り。公式なら $10-4+1=7$ 個。「+1」を忘れて 6 個としないように!

練習 5ダミー変数
$\displaystyle\sum_{k=1}^{10} k^3$ と $\displaystyle\sum_{i=1}^{10} i^3$ の関係として正しいものは?
💡 ヒント両方とも展開して書き出してみると…?
📖 解説

どちらも展開すれば $1^3+2^3+\cdots+10^3$ で完全に同じ。カウンターの文字(ダミー変数)は展開すると消えるので、名前は何でもよい。