第5章 応用 — 入試につながる和
Σを「使いこなす」段階へ。$S_n$ と $a_n$ の関係、群数列、Σの中のΣ、そして入試型の総合演習。
応用で扱う二重和や群数列は、階層化されたデータの集計に近い考え方です。たとえば「日ごとの商品別売上」「クラスごとの生徒別点数」「AIで予測と正解のズレを全データ分足す」といった場面では、どのまとまりを先に合計するかが重要になります。
1$S_n$ から $a_n$ を取り出す
初項からの和 $S_n = a_1+a_2+\cdots+a_n$ が式で与えられたとき、逆に一般項 $a_n$ を取り出すことができます。 図で見ると「棒の差」です。
$n \geqq 2$ という条件が付くのは、$n=1$ だと $S_0$ が存在しないから。 $a_1$ は必ず $S_1$ から別に求めて、あとで式に合流できるか確認する。
例:$S_n = n^2 + 2n$ のとき
$a_1 = S_1 = 3$ で、これは $2n+1$ に $n=1$ を代入した値と一致。よってすべての $n$ で $a_n = 2n+1$。
$S_n = n^2+2n+{\color{red}2}$ なら $a_1 = S_1 = 5$ だが、$n\geqq2$ の式は同じ $a_n = 2n+1$(差を取ると定数は消える)。 $n=1$ を代入した値 $3 \ne 5$ なので、答えは「$a_1 = 5,\; a_n = 2n+1\;(n\geqq2)$」と場合分けのまま書く。
2群数列 — 区切って数える
奇数の列 $1,3,5,7,\dots$ を「第 $n$ 群に $n$ 個」入るように区切ります。 スライダーで注目する群を変えてみよう。
- 第 $n$ 群の直前までに何個あるかを数える:$\displaystyle\sum_{k=1}^{n-1}k = \frac{n(n-1)}{2}$ 個
- だから第 $n$ 群の先頭は「全体の $\dfrac{n(n-1)}{2}+1$ 番目」。元の数列の一般項に代入して値を求める
この例では元の列が奇数列($m$ 番目の数は $2m-1$)なので、第 $n$ 群の先頭の数は $2\left\{\frac{n(n-1)}{2}+1\right\}-1 = n^2-n+1$。
3Σの中のΣ(二重和)
Σの中身にまたΣが入ることもあります。あわてず、内側から順に計算します。
例題:$\displaystyle\sum_{i=1}^{n}\left(\sum_{j=1}^{i} j\right)$ を求めよ。
$n=3$ で検算:$1 + (1+2) + (1+2+3) = 10 = \dfrac{3\cdot4\cdot5}{6}$ ✓。 「三角数の和(四面体数)」と呼ばれる有名な和です。
4総合演習A:群数列(入試型・誘導付き)
大問A奇数の列 $1,3,5,7,\dots$ を、第 $n$ 群に $n$ 個入るように区切る: $\;1 \mid 3,5 \mid 7,9,11 \mid 13,\dots$ 上の図解を思い出しながら小問を順に解こう。
💡 ヒント
第1群から第10群までの個数の合計 $= \sum_{k=1}^{10}k$。📖 解説
第 $k$ 群には $k$ 個入るので、第10群の末項までの総個数は $$\sum_{k=1}^{10}k = \frac{10\cdot11}{2} = 55 \text{ 番目}$$
💡 ヒント
第9群の末項は $\sum_{k=1}^{9}k = 45$ 番目。だから第10群の先頭は46番目の奇数。$m$ 番目の奇数は $2m-1$。📖 解説
第10群の先頭は全体の $45+1 = 46$ 番目。46番目の奇数は $$2\cdot46 - 1 = 91$$ 公式 $n^2-n+1$ に $n=10$ を入れても $100-10+1=91$ ✓
💡 ヒント
第10群は $91$ から始まる連続する奇数10個(等差数列)。和 $=\dfrac{(\text{初項}+\text{末項})\times\text{項数}}{2}$。📖 解説
第10群は $91, 93, \dots, 109$(初項91、公差2、10個)。末項は $91+2\cdot9=109$。 $$\text{和} = \frac{(91+109)\times10}{2} = 1000$$ じつは「第 $n$ 群の和 $=n^3$」という美しい性質がある($10^3=1000$)。第2章の $\sum k^3 = (\sum k)^2$ の図とつながっている!
5総合演習B:$S_n$ から $a_n$(入試型・誘導付き)
大問B数列 $\{a_n\}$ の初項から第 $n$ 項までの和が $S_n = 2n^2 - n$ で与えられている。
💡 ヒント
$a_1 = S_1$。「1項までの和」は初項そのもの。📖 解説
$$a_1 = S_1 = 2\cdot1^2 - 1 = 1$$
💡 ヒント
$S_{n-1} = 2(n-1)^2 - (n-1)$。展開して引き算すると1次式になる。📖 解説
$$a_n = (2n^2-n) - \{2(n-1)^2-(n-1)\} = 2n^2 - n - (2n^2 -5n + 3) = 4n - 3$$ よって $a_5 = 4\cdot5-3 = 17$。($S_5 - S_4 = 45 - 28 = 17$ でも確認できる)
💡 ヒント
B(1) の答えと、$4n-3$ に $n=1$ を入れた値を比べる。📖 解説
$4\cdot1-3 = 1$ は B(1) で求めた $a_1 = 1$ と一致するので、まとめて $a_n = 4n-3$ とできる。 ただし「一致するか確認する」手順そのものは省略できない(一致しない問題も出る)。 答案では「$n=1$ のときも成り立つ。よって $a_n = 4n-3$」と一言書くこと。
6修了おめでとう!
ここまでで、Σの読み方(第1章)→ 公式(第2章)→ 計算の型(第3章)→ テクニック(第4章)→ 応用(第5章)まで一通り学びました。
- 4つの基本公式を、図の理由ごと言える
- 「分けて・公式・くくる」が手が勝手に動くレベルになっている
- $\frac{1}{k(k+1)}$ を見たら反射的に引き算に分解できる
- $S_n$ から $a_n$ を出すとき、$n=1$ の確認を忘れない
まだ ✅ が付いていない章があれば、学習マップから復習しよう。