第4章 計算テクニック
公式が使えない形の和を攻略する、入試頻出の3大テクニック。
この章の中心は「差分」と「累積」です。在庫の増減、口座残高、ローン返済、ログデータの変化量のように、となり合う値の差を追うと全体が見える場面があります。望遠鏡和や階差数列は、その構造を式で扱う練習です。
1テクニック① 部分分数分解 —「望遠鏡和」
$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{k(k+1)}$ のような「分数の和」は、基本公式では計算できません。 そこで、各項を引き算の形に分解します。
(右辺を通分すれば $\frac{(k+1)-k}{k(k+1)}=\frac{1}{k(k+1)}$ に戻るので成立)
分解した形で和を書き並べると、となり同士の項が次々と打ち消し合います。「▶ 打ち消す」で確かめよう。
中間の項がすべて消え、最初と最後だけが生き残る:
伸縮する望遠鏡のように和が縮むのでこの名前。$\dfrac{1}{k(k+2)}=\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+2}\right)$ のように分母の差で割るパターンもある(この場合は2つ飛ばしで消える)。
2テクニック② (等差)×(等比) 型 — ずらして引く
$S = 1\cdot1 + 2\cdot2 + 3\cdot4 + 4\cdot8$(係数が等差 $1,2,3,4$、後ろが等比 $1,2,4,8$)のような和は、 $S$ に公比を掛けて1つずらし、引き算するのが定石です。
これを一般の $n$ でやってみると:
例題:$S = \displaystyle\sum_{k=1}^{n} k\cdot 2^{k-1}$ を求めよ。
- 掛けるのは等比部分の公比(この例では 2)
- $S-rS$ を計算するとき、最後の項 $-n\cdot 2^n$ が引き算で余るのを忘れない
- 残った等比数列の項数(この例では $n$ 個)を確認する
3テクニック③ 階差数列 — ジャンプの合計で進む
数列 $1,\,3,\,7,\,13,\,21,\dots$ のように規則が見えにくいときは、となり合う項の差(階差)を調べます。
数列 $\{a_n\}$ の階差数列を $b_k = a_{k+1}-a_k$ とすると、
「スタート地点 $a_1$ に、そこまでのジャンプ(階差)を全部足す」という意味。 $a_n$ に着くまでのジャンプは $n-1$ 回なので、上端は $n$ ではなく $n-1$。
例:$1, 3, 7, 13, 21, \dots$ の階差は $2, 4, 6, 8, \dots$($b_k = 2k$)。よって $n \geqq 2$ のとき
$n=1$ のときも $1^2-1+1 = 1 = a_1$ となり成立。最後に $n=1$ の確認を書くのが答案の作法です。
$\sum_{k=1}^{n-1}$ の計算では、公式の $n$ に $n-1$ を代入する。 たとえば $\sum_{k=1}^{n-1}k = \dfrac{(n-1)n}{2}$。ここで $\dfrac{n(n+1)}{2}$ としてしまうのが超頻出ミス!
4どのテクニックを使う? — 見分け方
- $\dfrac{1}{(\ )\times(\ )}$ の形 → 部分分数分解(引き算の形に割る)
- $(k\text{ の1次式})\times(r^k\text{ の形})$ → $S-rS$ 法
- 数列の規則が見えない → 階差を取ってみる
- $k$ の多項式だけ → 第3章の「分けて・公式・くくる」
5練習問題
💡 ヒント
$1-\dfrac{1}{n+1}$ の形になる。$n=99$。📖 解説
$$\sum_{k=1}^{99}\frac{1}{k(k+1)} = 1 - \frac{1}{100} = \frac{99}{100}$$ 中間の $\frac{1}{2}, \frac{1}{3}, \dots, \frac{1}{99}$ がすべて打ち消し合う。
💡 ヒント
$\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+2}$ を通分すると分子は $(k+2)-k = 2$。この「2」を消すには?📖 解説
$$\frac{1}{k}-\frac{1}{k+2} = \frac{(k+2)-k}{k(k+2)} = \frac{2}{k(k+2)}$$ なので両辺を 2 で割って $\dfrac{1}{k(k+2)} = \dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+2}\right)$。 一般に $\dfrac{1}{A\cdot B} = \dfrac{1}{B-A}\left(\dfrac{1}{A}-\dfrac{1}{B}\right)$(分母の差で割る)。
💡 ヒント
本文の結果 $S=(n-1)2^n+1$ に $n=5$ を代入。または $1+4+12+32+80$ を直接計算。📖 解説
$$S = (5-1)\cdot2^5 + 1 = 4\cdot32+1 = 129$$ 直接確認:$1+4+12+32+80 = 129$ ✓
💡 ヒント
$a_6 = a_1 + (\text{ジャンプ5回分}) = 3 + (1+3+5+7+9)$。📖 解説
階差は奇数列 $b_k = 2k-1$。$$a_6 = a_1 + \sum_{k=1}^{5}(2k-1) = 3 + 25 = 28$$ 検算:$19$ の次の階差は $9$ なので $19+9=28$ ✓
💡 ヒント
$\dfrac{k}{3^k} = k \times \left(\dfrac{1}{3}\right)^{k}$。「(等差)×(等比)」の形!📖 解説
係数 $k$ が等差、$\left(\frac13\right)^k$ が等比(公比 $\frac13$)なので $S-\frac13 S$ を計算する型。 「商の形だから部分分数」と早合点しない(部分分数分解は分母が積の形のとき)。 また $\sum\frac{k}{3^k} \ne \frac{\sum k}{\sum 3^k}$ にも注意。